先輩パパとママの毎日コラムvol.136

きみと一緒、あたらしい時間「スタートの日」

2018/2/13
きみと一緒、あたらしい時間「スタートの日」 きみと一緒、あたらしい時間「スタートの日」

料理創作ユニットGomaの中村亮子さんのマタニティ日記。

つづき)日が暮れ、夜を迎え、日付が変わっても子宮口は開かない......。途中、体をほぐすためにお風呂にも入ったし(服を脱ぎ着するのも一苦労だったが、水中に入るとやや痛みは逃げた)、整体の先生にも来てもらったりもしたが、夜中になってもどうにか4cmほどしか開かないのだ。

原因は私の万年肩こりから来ているようだ。出産前は仕事をするな、と言われていたにも関わらず、ギリギリまで仕事が終わらずバタバタの日々....…。「仕事する身体」から「産む身体」への移行ができていなかったのだ(妊娠中元気だったことをいいことに何となく出産もうまくいくような気がしていた私は本当に甘かったです)。

2分間隔くらいでやってくる陣痛に夜通し唸り声をあげ、痛さで思わず涙が出た。実は助産院では水中出産を希望していて、その用意もしてもらっていたのだが、激しい陣痛を前にそこまで辿り着けないかも、と思った。腰と背中とお尻が異様な程痛くなるので寝ている体制も辛く、ヨガのアグラの姿勢が一番マシだった。

気がつくと部屋の中にはたくさんの人が一緒になってがんばってくれていた。薄暗い部屋の中で助産師さんたち、家族、整体の先生、助産師インターンの学生さんが代わる代わる肩を揉んでくれたり、背中をさすってくれたりしてくれる。終わりが見えない痛みに苦しみつつ、そのことがとてもありがたかった。1時間に1度ほどトイレに行った。フラフラだったが、トイレに行き、髪を縛り直すと気持ちがシャキッとしたからだ。鏡を見ながらおなかの赤ちゃんに話しかける。「もうすぐ会えるね!がんばるからね!!」と。

しかし、がんばりも虚しく夜が明ける。院長先生が意を決した様子で「病院に移動しましょう」と言った。子宮口は6cmまで開いたが、既にここまでに長い時間がかかっていること、母体と赤ちゃんの体力が限界に達する前に「自分で産む(自然分娩で産む)」ために、移動という選択をすることを勧められ同意した。水中だ何だというこだわりには何の未練もなかった。赤ちゃんが無事で出てきてくれたらそれだけでいい。病院へは家族の他、院長先生と助産師のインターンでずっと診てくれた学生さんも来てくれたので心強かった。

病院へ移動

病院まで車で40分揺られ、陣痛の間に少し眠れたのがよかったらしい。内診室に入るとすぐに破水。子宮口も8cm開いてくれたのでバタバタと分娩室へ向かう。ここで開いてなかったら帝王切開の可能性もあったので、水中はできなくても下から産めるだけでありがたい。分娩台に横たわるともうひたすら激しい痛みが押し寄せる。「痛い痛い痛い!」と声に出てしまう私の手を学生さんと家族が握ってくれる。少しだけ促進剤を打ってもらったのが最後のひと押しとなり、痛みは容赦なく襲いかかる。意識は朦朧とし、発するのは言葉ではなく叫びになっていた。

学生さんと家族が手を握ってくれる

いよいよ分娩へ。しかし陣痛があまりにも長かったからか?いきみはじめてからの分娩自体はあっという間だった。終わりが見えない陣痛よりもこれさえ乗り切れば!な分娩の方が気持ち的に楽でもあった。6回ほどいきんで無事赤ちゃんは出てきてくれたのだが、シンプルに「産む」こと自体はある意味気持ちがよかったかも。もちろんものすごく痛かったけど、産む瞬間、そこにいるみんなの想いがひとつになるような気がした。

赤ちゃん

産まれたての赤ちゃんはすぐホギャアと泣いてくれて、胸元で顔を見せてくれた。小さな顔、小さな身体。だけど、全身で生の力を放っている、とても存在感のあるヒトだった。必死に泣くその姿が最高に愛おしい。

赤ちゃん2

「やっと会えたね」

ゴールではなく、ここからがスタート。

ちいさな足
中村亮子

PROFILE

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食や子どもをテーマに料理、雑貨デザインなど幅広く活動している料理創作ユニットGomaを従姉妹のアラキミカと主宰(www.gommette.com)。媒体での作品発表他、ものづくりワークショップ開催なども行う。著書に、絵本へんてこパンやさんシリーズのレシピ本『12つきのおはなし&パンレシピ』(フレーベル館刊)、『かんたん☆かわいい♡だいすきクッキング』(あかね書房刊図書館シリーズ)、レシピ付き絵本『へんてこパンやさん』(フレーベル館刊)など子どもに向けてのものも多数。
instagram.com/ryocogoma

(制作 * エチカ)

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