先輩パパとママの毎日コラムvol.25

すっきり、楽しく、自由な育児「“パパ、ママ今日会いに行くよ”赤ちゃんと乗り越えた出産」

2016/6/27
すっきり、楽しく、自由な育児「“パパ、ママ今日会い... すっきり、楽しく、自由な育児「“パパ、ママ今日会い...

アメリカ・ミシガン州で暮らす人気ブロガー・ジョンソン祥子さん。ママのやさしい目線で綴った、妊娠と出産、そして愛息子・一茶くんの子育てのこと。

生後10分の一茶。義母に抱かれて。

予定日を2日ほど過ぎた真夜中、ただならぬ違和感をお腹に感じて目が覚めました。初めて体験する痛みだったけれど、赤ちゃんが「今日会いに行くよ」と言っているのだとすぐにわかりました。この日を迎えるまでは不安の方が大きかったけれど、「10ヵ月間お腹にいた我が子にやっと会える」と思ったら、これから迎える出産というプロセスが、なんだか楽しみにさえなったのでした。

陣痛は激しくなる一方だったけれど、痛みは赤ちゃんからの「メッセージ」だと思うと、苦痛が少し和らぐような気がしました。ちなみに、アメリカは「無痛分娩」が主流で、病院で出産する人の7割が、無痛を選択するそう。実際、私も陣痛が始まるまでは、無痛に惹かれていたのですが、お腹の赤ちゃんと意思を疎通できなくなってしまうのが残念で、普通分娩を選択しました。こちらは、出産の途中でも方法を変更することが可能で、そんな風に選択肢があることも、心の余裕につながっていたと思います。

実際の陣痛は……想像していたものとは全く違いました。妊娠中に体験談で読んだような、激痛でも、鈍痛でも、鋭い痛みでもない、黒板を鉄の爪でギギギーとひっかくような、神経に触るいやぁなタイプの痛み。波が来るたびに、体がこわばって冷や汗がでそうになりました。でも、一番つらかったのは、この痛みに耐えることではなく、分娩のための体力が奪われないよう痛みと「闘わない」ようにすること。陣痛が痛みを感じる「自分」との闘いだというのは、新しい発見でした。結局、陣痛は18時間続いたのですが、その間痛みをどう「逃がす」かということに全神経を集中させていました。

私が試したことのひとつが、「ベッドに横たわらない」こと。病院に到着してから色々な体勢にトライしてみたのですが、私の場合、寝転ぶと体に力が入り、痛みが体から抜けていかなかったんです。そしてもうひとつ、「バランスボールにまたがる」こと。ナースの方に用意してもらった大きなゴム製のボールにまたがって、ひたすら円を描くように腰を動かしていました。ちなみにこの動きは、痛みを逃す効果と共に、赤ちゃんが降りてくるのを促す作用があるんだそうです。

でも、陣痛も12時間くらいを過ぎた頃からは、痛みに加えて「心細さ」で、波が来るたびに涙が出るようになって……。

そんな私を勇気づけてくれたのが、病院に来てからベッドの柵に貼っていた1枚のメモ用紙でした。メモに書き留めていたのは、陣痛が始まったときに赤ちゃんから受け取った「パパ、ママ、今日会いにいくよ」というメッセージ。それを見ながら、「頑張っているのは、私だけじゃない」と自分を奮い立たせました。

痛みが「今日会おうね」から「もう会えるよ」に変わったとき、3500gの元気な男の子が生まれました。陣痛が始まってから、トータル19時間と少し。産むからこその痛みだけれど、お腹の子がいなければ、乗り切れなかったと思います。

会いにきたよ。自分のお腹にいたなんて、既に夢のことのよう。

苦しいのに頑張ってくれてありがとう。

小さい身体で励ましてくれてありがとう。

こんなに希望に満ちた痛みがあるんだと、教えてくれてありがとう。

胸いっぱいの感謝と共にお祝いした「誕生日」。この先も、初めて心が通じたあの日の感動をずっと覚えていたいなぁと思います。

お留守番出産期間は、義両親宅で留守番していた愛犬のマル。
ジョンソン祥子

PROFILE

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写真家、ブロガー。アメリカ人男性との国際結婚を機に渡米。在米12年目。現在は夫と息子の一茶君、柴犬のマルとともに、アメリカ・ミシガン州に暮らす。最新刊『すっきり、楽しく、自由に暮らす』(新潮社)発売中。
ブログ「Maru in Michigan」: http://shibanomaru.blog43.fc2.com/
Twitter: https://twitter.com/shibanomaru

(制作 * エチカ)

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