先輩パパとママの毎日コラムvol.33

イラストレーターBoojilの育児絵日記・赤ちゃんとわたし「夫婦であること、家族であること」

2016/8/2
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初めての妊娠・出産・子育て真っ最中のイラストレーターBoojilさんのエッセイ。

夫と知り合ったのは、今から15年前、高校2年生の春。今でも鮮明に覚えている。わたしたちは同じクラスで、隣の席だった。思春期真っ只中の17才、当時の彼は女性と話す事が大の苦手で、もちろんわたしの目を見て話をしてくれた事などほとんどなかった。

口数の少ない彼の秘めたおもしろさに気付いた出来事がある。それは、好きな映画を聞いた時のことだった。彼が好きな映画は「フォーカス」という盗聴マニア役の浅野忠信が主演の作品。マニアック、且つ、重苦しい内容で、10代のわたしにとってはかなりの衝撃作だった。「この人、ちょっと変わっているなぁ。」

2001年、同級生がジュラシックパーク3の話題で持ち切りの中、夫は盗聴マニアの映画を見ているなんて、よっぽどの変わり者だ。一瞬にして、わたしはこのミステリアスな男子に夢中になった。

しかしながらそれが「好き」という感覚だった事に気付いたのはもう卒業してからのこと。思い返せば、大人になるまでその気持ちに気付かないふりをしていたのだなあと思う。その頃、縁結びの神様はこちらに見向きもせず、わたしたちはそれから10年以上、友達関係を続けることとなる。

それから10年が経った、忘れもしない2011年3月11日。東日本大震災が起きた。

最初に連絡をとったのは家族、そして2番目が彼だった。安否確認をした事がきっかけで、互いが大切な存在だということにようやく気付いたようだ。

10年と言う月日を経て、わたしたちは寄り添うようになり、それから数年を経て夫婦となった。親友が夫になるなんて、夢にも思わなかったこと。あの時、隣の席に座っていた、内気な彼が生涯のパートナーになるとは!人生は奇想天外で、おもしろいなあと思う。

幸運なことに翌年、第一子となる長男が産まれ、わたしたちの絆はより深いものになった。こんなにも子どもの存在が大きなものだとは思っても見なかった。こんなにかわいい生き物がこの世に存在していたなんて、信じられない。それくらい、みんな親バカになってしまう。だから大変な育児も乗り越えられるのだろう。

今、わたしたちは、息子の成長を願い、きちんと母として、父として、ひとりの人間の世話をやいている。育児は思った以上に時間も必要だし、手間もかかる。だからこそ、夫婦手を取り合って仕事も育児もこなす必要がある。

もともと子どもが好きだったこともあるけれど、夫が出来ない事と言えば、授乳くらいで、1才の息子に対し、オムツ替えから、離乳食とミルクの準備、お風呂にいれるのもなんのその、最近は寝かしつけまでできるようになった。もうこれは「お母さんのようなお父さん」と言ってもいいくらい、夫は育児に協力的だ。とても、とても助かっている。

こんな風に、率先して育児に介入してくれるのは、もしかしたらわたしたちの中でちょっとしたルールを作っていたからなのかもしれない。仕事も家事も育児も対等に、できるほうがやる。それは結婚してから約束したこと。子どもが産まれてからは「お母さんだからやらなくちゃ。」「お父さんだからやらなくちゃ。」という線引きを持たないようにしている。

お互い協力し合っているにも関わらず、仕事と育児の両立で行き詰まる事もある。時たま「わーーーー!」と泣きたくなるし、育児の疲れから、ついついカーッと怒ってしまう事もある。互いに不満に思ったり、喧嘩だってしてしまう。口をきかなくなることもある。

しかし、そんな一悶着も一瞬でかき消してしまうのが、息子の笑顔。純粋無垢なしあわせの塊。

この笑顔を守りたいから、わたしたちは一緒にいるんだった。わたしたちは愛し合っているから、この子を授かったんだ。

夫婦喧嘩をした時は、ひとりの時間をもらう。冷静になると、見えてくるのだ。わたしたちのスタートが。

そうだ、わたしがこの人を選んだんだ。わたしたちがいて、息子がいる。

そう思うと、ふわっと心が軽くなる。

息子を挟んで、繰り広げられる日々はわたしたちの歓びであり、しあわせを繋ぐ大切な時間。

子どもの存在の尊さよ。

夫婦になり、子どもが産まれ、家族になれたこと。

この先、どんなに大変なことが待ち受けようとも、わたしたちが出会った日。夫婦になった日。息子を胸に抱いた日。

スタートに感じたすべての歓びを、ずっと、忘れないでいたいなぁと思う。

Boojil (ブージル)

PROFILE

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イラストレーター/エッセイスト/漫画家。 http://boojil.com/
海外ひとり旅から生まれた極彩色でピースフルな作風で観る人を優しい気持ちにしてくれる不思議な力を持つアーティスト。自身のひとり旅を記したエッセイ『おかっぱちゃん旅に出る』(小学館文庫)がNHK Eテレでアニメ化。好きな国はメキシコ、ラオス、インド。2012-13年、メキシコへ留学中、スペイン語と民芸品作りを学ぶ。春に帰国し、東京都練馬区にある古民家でアトリエ兼、スタジオ・イベントスペース”東京おかっぱちゃんハウス“をオープン。現在、広告、CDジャケット、キャラクター、デザインなど、ジャンルを問わず活動中。

(制作 * エチカ)

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