自分の身体の中にもう一つの生命が宿っている。その奇跡が始まると同時に、自分の身体が自分のものではないような感覚！つわりはもちろんのこと、感情の起伏、大きくなっていくおなか…赤ちゃんが生まれてくるまでに、今まで経験したことがないようなことばかり起こるわけですが、その中の一つに、味覚の変化があった方も多いのではないでしょうか。

私は、一人目の妊娠中、いわゆる食べづわりというもので、おなかが空くと気持ち悪い、何か口に入れていたい…なんて状態が続いていたので、出かけるときはバッグの中に、ラップに包んだおにぎりを常に携帯していたときがありました。歩きながらもぐもぐ、バスの中でこっそりもぐもぐ…お守りのように持ち歩いていたのを思い出します。

実家からの野菜便にも助けられました。

好きだったものがまったく食べられなくなったり、苦手だと思っていたものが急に食べたくなったりと、自分がロボットになって、中で操縦されているような、不思議な体験。よく聞くのがフライドポテトを無性に食べたくなる！という話ですが、例にもれず、私も食べたくなったものでした。

そして、忘れもしないのが、キムチ！キムチがものすごく食べたくて、妊娠発覚後、連日食べていたわけですが、あまりにも食べていたので、そのときの胎児ネームはキムチでした（笑）。キムチ〜元気かな〜、キムチ〜大きくなってきたね〜なんて、おなかをさすりながら夫と話しかけたりしていたのも、今ではいい笑い話です。そんな状態が１〜２ヵ月続いた後は、糠漬けでした。もともとあまり得意ではなかったわけですが、その当時お店で働いていたときに、一緒に働いていた友人が漬けていたのをボリボリ食べて、驚かれたのもいい思い出です。

後にも先にも、こんなにキムチを毎日食べ続けた日はありません！

今考えると、発酵食品がとりたかったんだろうな〜と、身体が求めている栄養素が詰まった食べ物を本能的に嗅ぎ分けて身体に取り込もうとするなんて、とっても動物的だなと思います。妊婦後期に食べたかったものは、ブロッコリーやほうれん草でした。これはきっと葉酸ですよね。人それぞれ違うと思うので、最後までジャンクフードが食べたかった方、まったく食事が喉を通らなかった方などいらっしゃると思うので、一概には言えませんが、自分の身体を通して、おなかの赤ちゃんに栄養がいく感覚というのが、徐々に徐々にわかっていくんだろうな〜と思ったりもします。

上の子は、いわゆる胎内記憶が残っていたようで、３才頃に聞いたときは曖昧な感じだったのですが、下の子のついでにもう一度６才のときに聞いてみたら、まさかの展開に！彼女は魚が大好きで、お刺身も焼き魚も大好物なのですが、「ママは、私がおなかの中にいたときにあんまり食べてくれなかったよね。私は食べたかったのに！」と言うではありませんか…！そうなんです。彼女がおなかにいた時期、いろいろなことが重なって、魚をあまり食べていなかった期間があり、私も食べたいな〜と思っていたから、とても記憶に残っているのです。

前世は猫だったのかな？！長女は大の魚好き。

彼女にそんなことを話したことはもちろんなかったので、私が伝えたことから作られた記憶ではない、ということは確か。これはまさに胎内記憶なのでは！？と大興奮！！お母さんと子どもがへその緒を通して繋がっているという、当たり前でいてとても神秘的な命の繋がり。おなかの中にいるときのお母さんと赤ちゃんって、やっぱり特別だなあ。食で繋がる親子の関係の大切さを、料理を仕事としていく上でも、伝えていきたいなと思っている日々なのです。

PROFILE

Rom 岡本雅恵このライターの記事一覧

料理家。友人と共にフードユニットTORiとして、カフェ営業、ケータリング、webや雑誌などのレシピ提供などを経て、2020年に長野へ移住。畑に隣接する古民家をアトリエとし、Romという屋号で活動を開始。野菜を育てたり、土に近い暮らしを通じて、さらに季節と地域を意識した食の在り方を模索中。女の子と男の子の二児の母。
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(制作 * エチカ)