赤ちゃんとベビーカーなどで外出する際、気になるのは赤ちゃんの熱中症ではないでしょうか。そこで今回は、小児科医の石戸谷先生に赤ちゃんの熱中症対策をお話いただきました。熱中症予防は暑さを避ける、水分補給をしっかりするということがポイントになるそうです。
赤ちゃんが熱中症になりやすい理由
赤ちゃんは汗をかきやすく、体温調節機能が未熟です。高温下では汗をたくさんかき、水分や塩分が失われて体温調整がうまくできなくなってしまいます。また体の8割ぐらいが水分なので、脱水症状も起こしやすいといわれています。さらに、ベビーカーに乗っている赤ちゃんは、地面に近いため熱の影響を受けやすく、また背中とシートが密着しているので熱がこもり、蒸れやすい状態。大人が暑いと感じているときは、赤ちゃんはさらに高温の環境下にいることになります。
赤ちゃんはこれらの理由から大人よりも熱中症になりやすいのです。そのため、ママやパパが赤ちゃんの熱中症対策を適切に行うことが大切です。
赤ちゃんの熱中症対策5つのポイント
蒸し暑い夏のお出かけは、しっかり赤ちゃんの熱中症対策をする必要があります。ママやパパが適切に対策をおこなったうえで、お出かけ中は注意深く赤ちゃんの様子を確認してくださいね。
1)衣類は通気性のよいものなどに調整する
暑さを逃すことができるよう通気性がよく、涼しい素材の服を着せましょう。また、帽子をかぶせて直射日光を防ぐことも大切です。汗で服が濡れているときは、汗で風邪をひいたり不快に感じたりするので着替えさせてあげましょう。
2)暑さをできるだけ避ける
できるだけ日差しが強くなる10時〜14時の時間帯を避けて外出するようにしましょう。どうしても外出する際は、日陰を選ぶなどしてできるだけ暑さを避けてください。
3)こまめに水分補給をする
離乳食開始前の赤ちゃんなら母乳やミルクを、離乳食を開始している赤ちゃんは母乳やミルクのほかにも麦茶や湯冷ましを飲ませたほうがよいでしょう。また、水分補給は授乳タイムにこだわらず外出前に飲ませたり、遊ぶ前や後に飲ませたり、離乳食に汁ものをつけたりして、意識的にこまめに飲ませるようにしてください。
4)体調に気を配る
暑さから体力を消耗しやすくなるので、睡眠や休息をしっかりとる、適度に体を動かす、授乳や離乳食で栄養をとるなどで生活リズムを整えて、赤ちゃんの体調を管理しましょう。また赤ちゃんの体調がすぐれないときは外出を控えてください。
5)ベビーカーにはタオルでくるんだ保冷剤を活用
冷やした保冷剤をフェイスタオルなどでくるんでベビーカ—の背もたれのところに入れると、赤ちゃんの体を冷やすことができます。ただし、冷え過ぎていないかこまめに確認し、必要に応じてタオルの厚みなどで調整するようにしましょう。
なお、昨今、ミニ扇風機の利用が大人にも子どもにも見られますが、使い方には気をつけましょう。気温が高い環境で使用すると汗だけが乾き、体温が上がったままになるため熱中症のリスクを高めてしまう可能性があります。まずは空気の通りが悪く蒸れやすい部分の通気性をよくし、熱や湿気をとってあげることが大切です。また、赤ちゃんに直接、風をあてるのではなく、水に濡らしたタオルを首に巻き、タオルに風を送ってタオルを冷却させるような使い方をすると安心です。
熱中症のサインとは?もしも熱中症かなと感じたときの対処法
赤ちゃんは自分でのどが渇いたなどと伝えることができないので、暑い環境の中にいるときは熱中症の症状がみられないか気にかけてあげましょう。熱中症のサインには、赤ちゃんの顔が赤くて体に触れると熱い、ぐったりしている、おしっこの量が少ないなどがあります。
これらのサインがみられたときは、熱中症を疑い、日陰やエアコンのきいた涼しい部屋に赤ちゃんを運びましょう。そして、体を冷やしたり、衣類をゆるめたり、水分補給をしてあげてください。体を冷やすには、太い血管が走る首周りやワキを冷たいペットボトルなどをあてると効果的です。水分は、母乳やミルクや水分など飲めるものを飲ませますが、可能なら塩分が含まれた経口補水液やベビー用イオン飲料などを少量ずつ与えてください。
症状が回復しない場合や、水分補給ができない場合はすぐに病院を受診してください。熱中症には軽度のものから重度のものまであるので、意識状態がおかしい、汗が出なくなっているなどのときは救急車を呼び、到着までの間も体を冷やし続けることが大切です。
最後に
赤ちゃんにとって夏は熱中症にかからないよう注意が必要な季節です。赤ちゃんとの外出を安全で楽しいものにするためにも、できるだけ暑さを避け、水分補給をするなどの熱中症対策はしっかりおこないましょう。また、赤ちゃんの熱中症のサインを見逃さないように、対策をしていても赤ちゃんの様子はこまめにチェックしてくださいね。赤ちゃんとママやパパが、楽しく夏を過ごせるよう願っています。
PROFILE
石戸谷尚子このライターの記事一覧
小児科 | 石戸谷小児科 院長
医師、医学博士。1981年徳島大学医学部を卒業後、東京慈恵会医科大学小児科入局、都立母子保健院及び慈恵医大付属第3病院勤務を経て1995年現職に。日本小児科学会認定 小児科専門医、日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医、日本血液学会認定 血液専門医。