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バウンサーから始まる家族のカタチ 〜プロダクトデザイナー深澤直人さんに聞く親子の思い出〜

2021/6/23
バウンサーから始まる家族のカタチ 〜プロダクトデザ... バウンサーから始まる家族のカタチ 〜プロダクトデザ...

深澤直人さんといえば、マルニ木工のアームチェア“HIROSHIMA”や“Taco”、人間工学に基づいてデザイン・開発された、B&B ITALIAの“HARBOR”など、……そのプロダクトの数々を通して、私たちの暮らしに新鮮な驚きと感動を与え続けてきたプロダクトデザイナーです。国内外問わず活躍する深澤さんがこのほど手がけたのが、新しく発売したピジョンの安心設計のバウンサー『Wuggy(ウギー)』。スタイリッシュなデザインと心地よさを兼ね備えたこのバウンサーをデザインするにあたって、深澤さんが思い出したのは、ご自身のお嬢さんの子育て体験だったと言います。深澤さんのあたたかな子育てエピソードと、バウンサーに込めた思いをお聞きしました。


ー今回バウンサーをデザインいただくにあたり、ご自身の子育て体験を思い出されましたか。

深澤さん
そうですね。子育ては大好きだったので、いろいろと思い出しましたね。妻は娘をアメリカで出産したのですが、アメリカって、生まれた次の日にもう退院するんですよね。母親は出産直後の体で動けないので、父親である私が、生まれたての赤ちゃんを育てなきゃいけないという体験に遭遇しまして。そこで没頭して子育てをしたことが、今でもとてもいい思い出になっています。父親がやるとか母親がやるとか、子育てはそういうものではなくて、共同してやることが成長する上でも家族を担っていく上でもすごく重要なことだと思って、真剣にやりましたね。

ーイクメンを地で行かれていたんですね。お仕事はどうされていたのでしょうか。

深澤さん
ダイニングにコンピュータを持ってきて、そこで仕事をしていたんですけれど、娘を背負いながら作業していたことがあります。そのときの写真があって、今もずっと大事に持っています。

ーお嬢様はそのお写真をご覧になって、何とおっしゃられていましたか。

深澤さん
今は大人になっちゃっていますけれど、私がその写真を持っていることは、彼女にとって重要なことだったと聞いたことがあります。

ー幸せなお話ですね。アメリカの子育て文化も気になります。

深澤さん
子育てグッズは譲り合うというのが当たり前でしたね。「生まれたよ!」と言うと、「これあげようか?」「これ使う?」といろんなオファーがあって、子育ての情報も一気に入ってきました。ベビーベッドは自分で作りました。まあ、デザインが仕事なので、そのくらいは自分でやろうと。布団もちゃんと縫って作りました。それはいい経験だったと思いますね。すごく楽しかったです。

ー当時、バウンサーも使われていたそうですが、印象に残っているエピソードはありますか。

深澤さん
キッチンで妻と料理をしていると、ひとり寝転んでいた娘がグズって泣くことがあったんですね。そのとき、バウンサーに彼女をのせて自分たちが見えるように置いたんですよ。すると泣きやんだだけでなく、彼女がその場に参加して喜んでいる感じが伝わってきたんです。赤ちゃんにも参加意識というのがあるんだなと思った瞬間でした。安心しているというよりも、ただ一緒にいるだけで満たされるというか。赤ちゃんにも、同じ空間で「一緒に何かしたい」って願望があるのかと思います。

Wuggy(ウギー)赤ちゃんの体を包み込むマトリョーシカのようなフレームや心地よくフィットする立体縫製など深澤氏のこだわりが詰まった『Wuggy(ウギー)』。

ー“参加意識”って素敵ですね。『Wuggy(ウギー)』にも、そうした思いが込められているのでしょうか。

深澤さん
そうですね。やっぱり、赤ちゃんは、大人の中に参加できると嬉しいと思うんです。例えば大人がテレビを見ていて、赤ちゃんにはその内容がわからないとしても、同じ場所で同じ時間を共有しているだけで喜んでいると思います。

そうした赤ちゃんの参加意識を『Wuggy(ウギー)』が満たすことで赤ちゃんの機嫌が良くなり、そんな赤ちゃんを見たら、大人も自然と笑顔になる。そんなふうに、さまざまな生活の場面で、常に一緒に使ってほしいという思いを込めて作りました。

ー『Wuggy(ウギー)』を中心に、家族みんなの笑顔が広がる様子が浮かびました。
それにしても、デザインの美しさにはうっとりします。フォルムやベルトなどのディテールはもちろんのこと、カラーも洗練されているので、リビングになじみますね。

深澤さん
少し前までは、子どものものといえば赤・ピンク・ブルーなどはっきりした色が多かったと思いますが、今は色の選び方が変わってきて、シックになっていますね。『Wuggy(ウギー)』はグレーをはじめベーシックなカラーで、私自身もとても気に入っています。みなさん暮らしのセンスがよくなっているので、大人が使っている家具やインテリアにマッチすることは大切ですよね。『Wuggy(ウギー)』の生地は、ソファや椅子などに使われている素材を使っているので、そういう意味でも、インテリアになじみやすいと思います。

スリムに折り畳めるスリムに折り畳めるので、持ち運びや収納に便利。

ーバウンサーをデザインされて、いかがでしたか。

深澤さん
バウンサーを自分の手でデザインできると思っていませんでしたが、子育て時代の平和で幸せだったときの思いが込められて嬉しいです。
このプロダクト全体を通して、バウンサーは親子が一緒に過ごす時間を実現させてくれる不思議な魅力のあるものだということを思い起こしました。


深澤さんのお話を伺って、バウンサーの概念が変わりました。
これまでは「手が離せないときに赤ちゃんを座らせておく場所」だったのが、「赤ちゃんが家族と一緒の時間を楽しむ場所」に変化しました。
バウンサーを通して、家族のしあわせな時間がもっともっと広がりますように。

※撮影に使用した製品は実際の仕様とは一部異なる点があります。

深澤直人さん 深澤直人
プロダクトデザイナー

人の想いを可視化する静かで力のあるデザインや思想に定評があり、国際的な企業のデザインを多数手がける。 電子精密機器から家具、インテリアに至るまで手がけるデザインの領域は幅広く多岐に渡る。デザインのみならず、その思想や表現などには国や領域を超えて高い評価を得ている。英国王室芸術協会の称号を授与されるなど受賞歴多数。2018年、「イサム・ノグチ賞」を受賞。多摩美術大学教授。日本民藝館館長。良品計画デザインアドバイザリーボード。

(撮影/矢部ひとみ 編集/羽田朋美(Neem Tree))

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