エディトリアルデザイナー兼イラストレーターの齋藤州一さんとイラストレーターの野田映美さんご家族の物語。今回はこいもくん誕生までをお届けします。
初めまして。齋藤州一といいます。このコラムでは文章を担当します。そして、挿絵は妻の野田映美が担当します。これから“こいもくん”こと我が子のことを中心にゆるく楽しく書いていこうと思ってますので、どうぞよろしくお願いします。
私たちは夫婦それぞれが個人事業主で、出勤はせず自宅の別々の部屋で仕事をしていて、文字通り常に一緒にいます。そんな我が家ですが、今回は最初ですし何は置いても我が子に登場してもらうためには、誕生について書かなければならないでしょう。

こいもくんは逆子でした。そうそう、当然のことながら“こいも”は我が子のニックネームです。もちろん本名は別にあるのですが、このコラムでは愛称のこいもくんと呼ぶことにします。こいものように頭が丸くてコロッとしているからこいもくんです。——逆子とわかってからは逆子が直るように逆子体操などを一緒に頑張っていたのですが、なかなか定位置に収まってくれませんでした。心配な日々は続きましたがポコポコと元気におなかを蹴ったりしていましたし、エコー写真を見てもすくすくと成長してくれているようだったので、それを感じるだけでも幸せな気持ちでした。そしてギリギリまで逆子が直るように努力したのですが、結局は予定帝王切開で産むことになったのでした。
二人とも30代後半で初産。帝王切開はリスクが伴うということは一緒に病院に行ったり、調べたりなどして知ったつもりではありましたが、いざ現実に行うとなると不安の波が押し寄せてきます。ああなったらどうしよう、こうなったらどうしようと思い始めたらキリがありません。その思いを断ち切ってくれたのは他でもない妻でした。
「産む日が確定した分、準備や心構えができる。陣痛を感じることもないし、州一くんも分娩室でそわそわすることもない。案外気が楽かもよ」
きっと不安な気持ちもいっぱいだったと思いますが、母になる人は強しというべきか、その前向きな言葉で私も気が軽くなりました。
予定帝王切開の日の前日に入院し、診察や同意書の提出、さらにはおなかを縦に切開するか、横に切開するかの確認をされました(担当医の方曰く、縦の方が取り出しやすく、横は傷跡が目立ちにくいのだそう。横でも概ね問題ないとのことで、我が家では横を選びました)。
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(メーカーズプッシュ)
そしていよいよ当日。昼の12時くらいから手術が始まると聞いていたのですが、前の方の帝王切開手術に時間がかかっているとのことで、2時間以上待つことに。家族は待合室で待たなければならなかったので、妻と離れ待合室で妻の両親と話をしたり、周りで同じように待っている家族の様子を眺めたりなどしていましたが、その間はそわそわそわそわ。心ここにあらずでした。
ついに、看護師さんが待合室までやってきて「齋藤さん、手術始めます」と声をかけられ、あたふたとしながら妻と対面。手術室の前まで付き添い「頑張って」と声をかけ(いざとなるとそんな言葉しか出なくなりますね)、見送りました。
およそ30分くらいで手術は終わる予定とのことでしたが、その時間の長いことといったら!待合室に戻り、時計と睨み合いながら、思考がぐるぐる回ります。手術の状況は?母体は、赤ちゃんは無事?赤ちゃんと会ったとき自分はどんなことを思い、どんな心境になるんだろう?そんなことまでぐるぐると巡らせていると、「齋藤さーん」待合室の前に保育器が運ばれてきました。中には赤くてなんとも可愛らしい存在が…!もぞもぞと手足を動かしたり、口や胸を動かして呼吸をしている!

最初に思ったのは「大きい!」でした。想像していた赤ちゃん像より大きい気がしたのです。ちゃんと妻のあのおなかの中でこんなに成長してくれていたんだと思いました。対面したのは初めましてだけれど、妻のおなかに命が宿ってから私たちとずっと“文字通り”一緒にいて、ずっと暮らし、ずっと成長していたんだと当たり前のことに改めて気付きました。逆子体操のときも一緒に頑張っていたのかも知れない。体操はうまくいかなかったけど、頑張ったね。ありがとう。

そして、面会が終わると野田の父に「おめでとう!」とがっしりと握手を交わされたのでした。これがこいもくんと私たちとの出会いです。
その後のお話はまた次回にでも。

PROFILE
齋藤州一・野田映美このライターの記事一覧
齋藤州一
1980年生まれ。宮城県出身。出版社のインハウスデザイナーを経て独立。書籍のデザインやイラストレーションなどを幅広く手がける。
http://sososographics.jp
野田映美
1982年生まれ。多摩美術大学美術学部生産デザイン学科テキスタイル専攻卒業。雑誌、ウェブなど各方面でイラスト、挿絵、イラストコラムを手がける。
http://nodakimi.main.jp
(制作 * エチカ)