先輩パパとママの毎日コラムvol.442

火山のふもとで深呼吸「コロナ禍での妊娠・出産」

2021/11/9
火山のふもとで深呼吸「コロナ禍での妊娠・出産」 火山のふもとで深呼吸「コロナ禍での妊娠・出産」

浅間山の裾野に暮らすピラティスインストラクター前村詩織さんファミリー。2021年春に蕗乃ちゃんが仲間入りし、家族5人に。今回はコロナ禍での妊娠・出産を振り返ります。

妊娠が発覚したのは新型コロナウィルス第2波の真っ盛り、2020年の夏のこと。感染拡大の状況や産後の生活のこと、保育園のことなど、ひととおり逡巡した末に長野の病院で産むことにしました。

東京から移動して2週間は感染拡大防止のため病院に入れません。妊婦健診の予定から逆算して引越しのタイミングを決め、長野に居を移したのは、冬に差しかかった10月の最後の日でした。金曜日、学校帰りの子どもたちを車に乗せて、東京から4時間ぶっ通しで運転して長野の仮住まいのアパートに向かった夜のことは鮮明に覚えています。軽井沢ICで高速を降りて碓氷峠を越えるのですが、車の窓の外は真っ暗な上にまあ寒いこと。慌ててリュックサックから長袖を引っ張り出し、ようやくたどり着いたガランとした仮住まいで段ボールの上にお鍋を載せてご飯を食べました。

当時住んでいたアパートの窓から望む浅間山。雪のかぶり方も噴煙の出方も毎日違います。当時住んでいたアパートの窓から望む浅間山。雪のかぶり方も噴煙の出方も毎日違います。

お世話になる病院では、コロナウィルス対策のため母親学級・両親学級の類はすべて中止。マタニティヨガも、妊婦さん同士で交流するクラスもなくなり、家族の出産への立ち会いも、入院中の面会も不可でした。妊婦健診では家族の診察室への付き添いができなかったこともあって、隣町の病院まで毎回自分で運転して行きました。そういう積み重ねで、徐々に「自力で産むんだ」という気持ちが育っていったような気がします。

いざ出産の日。予定日より1週間ほど早く、明け方に陣痛がきたのですが、あいにく夫は出張中。子どもたちを学校に送り出した後、近所の移住仲間に病院まで車で送ってもらいました。さいわいにして超がつくほどのスピード安産で、お昼には赤ちゃんに会うことができました。

予定日を待たずに大急ぎでやってきた、小さな小さな蕗ちゃん。予定日を待たずに大急ぎでやってきた、小さな小さな蕗ちゃん。

夫にしてみたら、大きなおなかの私に「いってきます」と言って出張に出かけ、1週間後に病院に行くと私が赤ちゃんを抱いていた、という状況。コロナで時間の感覚がおかしくなって…とはよく聞きますが、自分のいない間に家族が増えているだなんて、さぞ不思議な感覚だったことでしょう。

出産からちょうど半年が経った今、振り返ってみると、見守ってくれた家族や仲間がいたこと、そして混乱気味の医療体制下でも無事に産まれてきてくれたことに、ふつふつと感謝の念が湧いてきます。

生後4ヵ月の蕗ちゃんを抱っこしながらデスクワーク生後4ヵ月の蕗ちゃんを抱っこしながらデスクワーク。

コロナ禍では何かと制限が多く、思い描いていた妊娠・出産とは違うかもしれません。でも、決してひとりぼっちではないし、いたずらに不安がって嘆く必要もありませんでした。妊娠中はコロナ予防で手洗いや消毒をしっかりしていたからか、風邪をひくこともありませんでしたし、不用意な外出もせずに、穏やかに過ごしました。

長女のときに経験した、家族に見守られてのにぎやかな出産もとてもいい思い出ですが、今回のひとりでの出産も決して悪くなかったなと思うのです。身体の感覚に集中して、陣痛から分娩までの経過をじっくり味わった、稀有な体験でした。

出産から5日間の入院期間は、思い返しても特別な時空間にいたよう。見舞い客がいないので、病棟には妊産婦さんと新生児だけ。暖かく、陽のひかりが注ぎ込む病棟は、新生児のふにゃふにゃした泣き声と、モニター音がするほかは静かで、落ち着いて心身を休ませることができました。

入院中、深夜にふと見ると、遠山の金さん状態になっていたので思わずパシャリ。病院の新生児着から腕が出てしまうほど小さかったんだなぁ。入院中、深夜にふと見ると、遠山の金さん状態になっていたので思わずパシャリ。病院の新生児着から腕が出てしまうほど小さかったんだなぁ。

10年以上前、第1子を妊娠中の私に、先輩ママが、赤ちゃんは光を持って生まれてくるからね、心配しなくて大丈夫だよ、と言ってくれたことがあります。赤ちゃんが生まれてみて初めてわかりました。確かに、ぴかぴかの赤ちゃんのまわりには光があふれているよう。小さな赤ちゃんの大きないのちに照らされていると、ひたひたと満たされてきて、もうあなたのほかには何もいらない、なんてメロドラマの台詞のような気持ちになってきます。こんな気持ちも、母になってはじめて知ったことのひとつです。

はじめまして、お姉ちゃんだよ。はじめまして、お姉ちゃんだよ。
前村詩織

PROFILE

前村詩織このライターの記事一覧

ピラティスインストラクター。日本で十数名しか保有していないオーストラリアのピラティス国家資格を取得し、ASICS Sports Complex TOKYO BAYなどでクラスを受け持つ。2020年長野に拠点を移し、フリーのインストラクターとして働きながら一男二女の子育て中。
https://www.instagram.com/shiorilates/

(制作 * エチカ)

RELATED 関連情報はこちらから

RANKING アクセスが多い記事をランキング形式でご紹介。

妊娠・出産・育児は、
わからないことがいっぱい。
悩み過ぎず、自分のペースで
行える育児のカタチを紹介していきます。
コモドライフとは?