"ていねいな暮らし"という言葉に、憧れと後ろめたさを通り越してちょっとした反感を覚えてしまうほど、ズボラなわたしです。週末に作り置きをしておけば平日は楽なのは分かっているけど、そもそも週末は家事から解放されたいモード全開なので、とてもできない。目が覚めたらコップ一杯の白湯を鉄瓶で沸かして、温度が下がるまで待ってひと口ずつ飲む、という理想形は頭の中にイメージしつつ、実際にできるのはせいぜい沸騰する前にヤカンを止めてぬるくしたお湯をごくごく飲むくらい。

そんなわたしがセルフケアを語るのだから、アロマオイルとか、お香とか…すてきなアイテムは出てきません。ごめんなさい。先に断っておきますね。

白湯の定義はさておき、ぬるま湯なら毎朝飲んでいます。

コロナ禍をきっかけにピラティスのオンライン配信を始め、少ししてから妊娠が発覚。と同時にひどいつわりが始まりました。長男長女のときに比べてもなかなか手強く、食欲がなくなり（わたしにしてはかなり珍しいこと！）、体重は４kgほど落ちました。

いちばんつらかった妊娠４ヵ月頃は、オンラインなのをいいことに、レッスン開始５分前までベッドやソファに横になっていました。けれども不思議なことに、どんなにつらくてもレッスンを始めるとすっとつわりが治まるのです。生徒さんに教える緊張感からアドレナリンが出ていたこともあるかもしれません。でも、妊娠した生徒さんも同じことを言っていたので、それだけではないのかも…。

つわりがひどくて、とても動く気になれなくても、レッスンがあるので毎日のように身体を動かしました。身体を動かすとき、呼吸は深くなります。何を隠そう、わたしにとってはこれが最大のセルフケアでした。

妊娠中はピラティスの師匠に定期的に個人指導してもらっていました。

ピラティス講師の立場からお話しすると、腹式・胸式にかかわらず、深い呼吸には自律神経のバランスを整える効果があると言われています。バラの香りをかぐように、鼻からすぅ〜っと吸い、肋骨を膨らませます。それから目の前のガラスを曇らせるように口からはぁ〜っと吐き切ります。すると、膨らんだ肋骨が締まってきます。これの繰り返し。立っていても座っていても、横になっていてもできるセルフケア、それが深い呼吸です。呼吸に意識を向ける習慣は、子宮が大きくなるにつれて息が上がりやすくなる妊娠後期にも、そしていざ分娩！というときにも大いに役に立ちました。

臨月に呼吸の練習。鼻から吸っておなかをゆるめ、口から吐いて体幹の奥にスイッチを入れていきます。

妊娠初期の頃、つわりとともに悩まされたのが立ちくらみの症状でした。座った姿勢やしゃがみ込んだところから立ち上がろうとすると、目の前が真っ白になるくらいサァーっと血の気が引いて、何かにつかまらないと立っていられないほどでした。産科医の親友に相談すると、水分不足を指摘されました。わたしはもともと喉の渇きに鈍感なのか、お水をそんなに飲まなくても何時間も平気でいられる体質でした。けれども妊娠中は血液量が増えることもあり、妊娠前よりたくさんの水分が必要だそう。とくに夏は汗もかくし、運動量も多いのに水を摂らないと、脱水症状が起こりやすくなるとのことでした。

いきなりたくさんは飲めないので、ほんの少しずつ、でも頻繁に水分を摂るようにすると、徐々にめまいも落ち着いていきました。一度にたくさん飲む必要はなく、おちょこで飲むくらいでいいそうです。そう聞いてからは少し気が楽になりました。タンブラーに常温のお水を入れて、どこに行くにも持ち歩くようにしました。この習慣は出産後、授乳中も続いています。

深い呼吸と適度な水分補給。あえて文字にするまでもないくらい基本的なことですが、だからこそ見落としがちかもしれませんね。

（左）陣痛室にもマッサージボールや読みかけの本と一緒に常温水を携帯しました。（右）吸法も水分補給も運動も、無理せず体調と相談しながら。

PROFILE

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ピラティスインストラクター。日本で十数名しか保有していないオーストラリアのピラティス国家資格を取得し、ASICS Sports Complex TOKYO BAYなどでクラスを受け持つ。2020年長野に拠点を移し、フリーのインストラクターとして働きながら一男二女の子育て中。
https://www.instagram.com/shiorilates/

(制作 * エチカ)