浅間山の裾野に家族5人で暮らすピラティスインストラクター前村詩織さん。コロナ禍で赤ちゃん連れで集まれる場所がどんどんなくなって、さてどうしましょう、というお話です。
東京で2人の子どもたちを育てているときのこと。仕事場から駆け足で保育園にお迎えに行き、「おなかすいた〜」とご機嫌ななめの子どもたちを連れて、帰り道の立ち飲み焼き鳥屋へ。焼き鳥2〜3串とビールを頼み、母も子もとりあえず小腹を満たして、帰ってからゆっくり夕飯の準備に取りかかる…これが金曜日のお気に入りコースでした。
月に一度、保育園近くにあるお寺の境内で開かれる縁日は赤ちゃんの頃から子どもたちも大好きで、ふらりと寄ってみれば必ず友人に会ったものです。銭湯に行けば、風呂上がりにはコーヒー牛乳を片手に漫画を読んでのんびり。振り返ると、赤ちゃんや子どもを連れて行ける場所にずいぶん救われていたなあと思います。
長野に移住して、3人目を産んだのはコロナ禍真っ最中。病院のマタニティヨガは中止になり、母親学級もなくなり、自治体主催の子育てひろばも休止に。そう、赤ちゃんを連れて集える場所がないのです!
赤ちゃんを育てていると、お出かけもひと苦労で、どうしても赤ちゃんと2人きりで家にいる時間が長くなります。それがコロナ禍でますます加速した感があります。行けるところといえばもっぱら公園ですが、寒い冬には外で長居もできません。感染警戒レベルが上がるにつれ、公共空間である図書館や公民館は真っ先に閉まってしまいました。
赤ちゃんと一緒に、抱っこや授乳でガチガチになった身体をほぐして、動かして、リフレッシュできる時間があるといいなあ。…ないなら作ってしまおう!
そんな勢いで「赤ちゃん連れOKピラティスクラス」を開設することにしました。
古民家のスタジオを借りてのピラティスクラスには、赤ちゃんを連れてきてもいいし、大人だけの参加ももちろんOK。託児はないので、赤ちゃんを横に寝かせて、必要ならケアをしながら思い思いにピラティスに参加してもらいます。「赤ちゃん連れOKのクラスです」と謳っているので、参加するのはご理解のある方ばかり。クラスの途中で赤ちゃんがぐずり出しても、あたたかく見守ってくれます。
クラス開設から半年の間にたくさんの赤ちゃんが遊びに来てくれました。初めて来たときにはゴロンと寝ているだけだった子がハイハイで歩き回るようになったり、歩けるようになったり。子育てがひと段落した先輩ママたちも、子育て中の方も、みんなで「かわいいねえ」「いい子にしてたねえ」と愛でています。レッスンが終わるとおしゃべりが始まったりして、本当にあたたかい雰囲気です。
自分が子育てしているときもこんな場があったら…、そう思える空間をこれからも作っていけたらいいな。
PROFILE
前村詩織このライターの記事一覧
ピラティスインストラクター。日本で十数名しか保有していないオーストラリアのピラティス国家資格を取得し、ASICS Sports Complex TOKYO BAYなどでクラスを受け持つ。2020年長野に拠点を移し、フリーのインストラクターとして働きながら一男二女の子育て中。
https://www.instagram.com/shiorilates/
(制作 * エチカ)