先輩パパとママの毎日コラムvol.7

なんとなくおかあさん「もしかして、マタニティーブルー?」

2016/5/13
なんとなくおかあさん「もしかして、マタニティーブル... なんとなくおかあさん「もしかして、マタニティーブル...

二人の子どものママでもあるライター・小宮山さくらさんによる等身大の子育てコラム。

ようやく待ちに待った赤ちゃんが生まれたのに、なんだか心がつらい。しんどい……。

自分の心に不思議な事件が起きたのは、産後3日目の朝でした。

まず違和感を感じたのは、三人部屋の病室に入院していた他のママさんたちの雰囲気。なんとなく、二人で口裏をあわせてわたしを避けているような気がしました。笑顔で挨拶しても、ぶすっとされたり、知らん顔をされたり。でも、わたしのいないところでは楽しくおしゃべりしてるみたい。あれれ……。仲間はずれにされている?

いま思えばおかしな話で、他の二人だって、たまたま出産時期が重なっただけの偶然の関係。出産が入院のスタートですから事前にお互いゆっくり話をする時間もないですし、みなさん出産という人生最大の大仕事を終えたばかり。新しい環境に対応するだけでいっぱいいっぱいなのだから、わざわざ仲間はずれをするなんてありえません。

だけどなんだかあのときは、「わたし、嫌われている!」という被害者意識にすっぽり覆われてしまったのです。

無事生まれてきた赤ちゃんにご家族も大喜び

その翌日、さらに事件が。

お見舞いに来てくれた家族に、娘の名前は「すみれ」にしようと思っていると話したところ、「お花の名前って素敵だね。そういえば、花の名前なら、他に○○っていうのもあるね!」とひとこと。ただ、それだけですよ。本当に何の悪気もないですし、今の名前をやめてこっちにしなさい、と言われたわけでもありません。

でも、わたしは、なぜかそのとき、自分が考えた名前が全否定されたような気分になってしまい、たいへん恥ずかしいのですが、ものすごく、ものすごく、きっとみなさんが引くほど、ものすごーくうろたえてしまい、その夜、無性に悲しくて悲しくて、ひとりでベッドで号泣してしまったんです。あほか……。

ちなみに、このコラムのタイトルに「なんとなくおかあさん」と付けるほど、普段のわたしはおおざっぱで、ぼんやり、のんびり、いいかげん。マイペースで人をいらつかせることはあれど、繊細とはほど遠いタイプです。ひとりめの子育て中も「なんだかふたりめみたいだね」と言われるくらい、いろんなところが適当です。

なのに、なのに、そんなわたしなのに!

当時は神経が360度びんびんに尖っていて、なんでもないことで勝手に傷ついて、自分で自分の気持ちがコントロールできない。産まれたばかりの赤ちゃんと真剣に向かい合わなくてはいけないのに、落ち込んでる場合じゃないのに、なんだか不安で、悲しくて、どうしようもなくて。

わたしって性格悪いのかも。わたしって嫌われているのかも。わたしってダメな母親なのかも。もう、ダメかも!

「マタニティーブルー」という言葉は知っていたけれど、それはなんとなく出産前の妊婦さんがなるものだと思っていました。あわてて、当時、教科書のように眺めていた妊婦さん用の専門書を広げてみると、そこにははっきりと、こういうようなことが書いてありました。

「マタニティーブルーは、産後2〜3日で始まることが多いです」
「突然悲しい気持ちになったり、わけもなく涙がでたり、不安で眠れなくなったりします」
「まわりの人が陰で自分の悪口を言っているような気がしたり、家族の何気ない言葉で傷つくこともあります」
「原因は出産です。胎盤が体外に排出されることによる急激なホルモンの変化に身体がついていけず、一時的に情緒不安定になるのです」
「ほとんどの方は10日〜2週間で自然に治ります」

これ。
これやん。
まったく、これやん。
教科書通りやん!

こんなに悩んで、自分だけの特別な現象なのではとうろたえていたことが、はっきりと本に書かれているくらいメジャーなできごとだったなんて……。そうか、そうなのか。ホルモンさまには逆らえないんだ。ホルモンさまの言う通りなんだ!

そう思うとなんだか急にゆったりしてきて、「しゃあないやん、だってホルモンさまのせいなんだから」と、ふっきれた気持ちに。名付けて「認めてしまって楽になろう作戦」です。

そして、翌日。わたしは病院に来た夫に、「ねえ、わたし、マタニティーブルーかも」と宣言。夫はちょっと動揺していましたが、「そうか、わかった」とひとこと。それからわたしの言うことには何も反論せず、「うん、うん」とうなずくだけのイエスマンに徹してくれました(地味な対応ですが、これが本当にありがたかったです)。

その後、数日でマタニティブルーはあっさり終了。いつものおおざっぱな私に戻り、家族の発言や同室のお母さんたちの態度も「なんであんなことが気になってんだろう……」と不思議に思えるくらいに雲散霧消。赤ちゃんとも比較的明るい気持ちで向き合えるようにました。

思い通りにならないときは、あっさりギブアップして、身を任せてみる。わたしを救ってくれたのは、そんなシンプルな方法でした。あと、「本に『なる』って書いてあるんだからそりゃなるんだろう、仕方ないや」と、自分を客観視して開き直れたこともすごくよかった気がします。

マタニティブルーを乗り越えて

だからみなさんも、産後、どうしようもない気持ちで苦しむことがあったなら、専門書や信頼できる情報サイトをキープしておくのもいいかもしれません。ただ、より深刻な産後うつなど、専門家の助けを借りたほうがよいケースもありますので、どうぞ無理だけはせず、「あれ?」と思ったら、身近な人への相談をお勧めします。

自分に厳しい方も、そうでない方も。産前産後だけは、可能な限り、悩みをひとりで抱え込まずに、甘えられるものすべてに甘えて、あえての「いいかげん」を目指してみてください。家族に暴言を吐いたって、大声で泣いたって、いじけたって、ひねくれたって、全然大丈夫。だって、ホルモンの仕業なんですから

どうか、みなさま。赤ちゃんを思う気持ちと同じぶんだけ、自分にもやさしい気持ちで、産後の特別な、そしてかけがえのないひとときを過ごせますように。

小宮山さくら

PROFILE

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ライター。クリエイターへの取材やインタビューを中心に、『カメラ日和』『tocotoco』(第一プログレス)などの雑誌、書籍、広告などで活動。参加書籍に『無名の頃』(パイインターナショナル)、『脇阪克二のデザイン』(PIEBOOKS)、『エジプト塩の本』(美術出版社)、『猪熊弦一郎のおもちゃ箱』(小学館)など。目下、2児の子育て中。

(制作 * エチカ)

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