先輩パパとママの毎日コラムvol.161

子育てを、ちょっと素敵にする工夫「アメリカでの出産の話」

2018/6/6
子育てを、ちょっと素敵にする工夫「アメリカでの出産... 子育てを、ちょっと素敵にする工夫「アメリカでの出産...

アメリカ・オレゴン州にあるアシュランドという芸術活動が盛んな美しい都市で暮らすセキアキコさんのアメリカでの子育てエピソード。

オレゴン州に引っ越してきたのは、妊娠7ヵ月のとき。今回は、名前を聞いたこともないアメリカの片田舎で息子を出産するまでの3ヵ月間のお話です。

アメリカに引っ越して真っ先にしたのは、産む場所を探すこと。事前にインターネットでも調べましたが、産む場所はやっぱり実際に見て確認したかったので、自宅出産をしてくれる助産師さんに会ったり、産院を見学させてもらったりすることにしました。ところが産院を見学する予定の日の朝、「ごめんなさい、急な出産が入ってしまったので明日の午後に変更させて下さい」と電話が。その後まさかの出産ラッシュが続き、さらに数回の予定変更を経てようやく見学に行けた頃には「なかなか見学に来られない夫婦」としてスタッフさんの間で噂になっている程でした(笑)。

中に入ると、院内はアットホームで明るい雰囲気。出産に関しても自然分娩で産むことを大切にしていたり、水中出産の設備も整っていたりと私の持っていた出産のイメージにぴったり!私も夫もこの産院がとても気に入って、迷うことなくここで出産すると決めたのでした。

雪景色をバックに家族写真。雪景色をバックに家族写真。この年は雪がたくさん降りました。

こうして始まった出産の準備、次はドクター探しです。アメリカでも色々な形があると思うのですが、私が選んだ産院にはドクターは在籍していません。ここで出産する人達は、各々かかりつけの産婦人科医がいて、出産は提携しているこの産院で行う、という形になります。私達も産院で何人か産婦人科医を紹介してもらい、連絡をとりました。

すると幸いなことに、「この先生は人気だから受け入れてもらうのは難しいかもしれません」と言われたベテランの先生にお願いすることができました(後の出産では先生の的確な判断力を目の当たりにして、この出会いにどれだけ感謝したことか!)。

さて、産院とドクターが見つかったからもう大丈夫……ではありません!アメリカには6年住んでいたので英語はある程度喋れますが、出産用語となるとちんぷんかんぷん。まさか出産するのに英語の勉強が必要となるとは……。すぐに産院の両親学級に申し込んで、単語を調べながらテキストを読み、なんとか妊娠・出産に必要な単語と知識を頭に叩き込みました。

日本からオレゴンに向かう飛行機からの景色。日本からオレゴンに向かう飛行機からの景色。

そうこうしている間に妊婦の時間はあっという間に過ぎていき(もちろん、山もあれば谷もありつつ)、いよいよ出産当日。予定日を1週間過ぎていたうえに羊水が減り始めていることも判明し、急遽促進剤を使っての出産開始です。でもなかなか子宮口が開かず、途中から赤ちゃんの心拍も不安定になってきたため、帝王切開に切り替えることになりました。ところがドクターが帝王切開の準備をしている間に、なんと子宮口全開に!そのままなんとか無事に出産を終えることができました。

赤ちゃんが産まれてくるまでは何度も緊迫する場面がありましたが、そんな中でも緊張感ほぼゼロの印象的な出来事もありました。それはお産の終盤、無性にいきみたい衝動が襲ってきたときのこと。私はそのとき、とっさに英語で、”I have an urge to push!”(pushはここでは「いきむ」という意味)と叫んだのですが、考えてみたら「have an urge to〜(〜したい衝動に駆られる)」なんて言い回し大学受験以来使ったこともないし、あの激痛と緊迫感の中でurgeなんて単語が自分の口から出てきたことに驚いて、叫んですぐ心の中で「おお!なんか英語出てきた!」と、ちょっと感動してました。今思うと、あの状況でどうしてそんな余裕があったのか不思議ですが(笑)。

生まれたての息子。生まれたての息子。私が撮った最初の写真です。

そして出産後は数時間のカンガルータイムの後、すぐに親子一緒に個室へ移動です。各種検査などでナースさんが部屋に来ることもありますが、特に何か教えてくれるわけでも手伝ってくれるわけでもなく……。おむつ替えも授乳も夜泣きも全部、自分でなんとかしなければなりません。唯一とても助かったのは食事でした。院内のカフェに電話すると、好きな料理をデリバリーしてくれるんです!しかも、結構美味しい。でもメニューの中に、注文してもカフェの店員さんから「これだけは絶対においしくないからやめておいた方がいい」と2回も断られたシフォンケーキがあって(笑)、3回目の注文でやっと食べられました(本当においしくなかったです……)。暖かい部屋で産まれたばかりの赤ちゃんと過ごし、おなかが空いたら電話一本ですぐにご飯が届く2日間は、産後の疲れを癒してくれました。日本に比べたら2日間という短い短い入院期間ですが、怒濤の育児が始まる前にリラックスしたときを過ごせたのは本当に良かったと思います。

こうして、私のアメリカでの3ヵ月の妊婦生活は終わりました。妊娠中は出産に対して色々な理想や思いがありましたが、出産中ずっと心にあったのは、ただただ、無事に赤ちゃんが産まれてきてくれることを願う気持ちだけでした。それは国や文化が違っても、出産に関わる人達みんなの共通の願いなのだと、私は日本とアメリカでの妊婦生活を通して感じました。私の妊娠・出産をサポートして下さった方々みなさんに、心から感謝しています。

セキアキコ

PROFILE

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アメリカ・オレゴン州で出産と子育てをスタート。現在はメイン州在住。サンフランシスコで写真を学んだ後、スタジオアシスタント、ブライダルカメラマンとして働く。
http://ameblo.jp/aco-84/

(制作 * エチカ)

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