先輩パパとママの毎日コラムvol.38

ハルちゃんと僕「あたらしい家族(前半)」

2016/10/18
ハルちゃんと僕「あたらしい家族(前半)」 ハルちゃんと僕「あたらしい家族(前半)」

アムステルダムに暮らしながら写真家・文筆家として活動する小野博さんの、愛娘・ハルちゃんとの日々

ある日の朝、妻から「おめでとうございます。妊娠しました」と告げられた。

ハルちゃんの妊娠の時は「おー」と答えたのだが、今回はなぜか「フハッ」と笑ってしまった。それは、ハルちゃん1人でも持て余しまくっているのに、二人だとどうなっちゃうんだろうね、想像できないわ、の「フハッ」である。

ドキドキした。

さっそくハルちゃんに「あかちゃんまん やってくるよ」と伝えると、「あかちゃんまん?」とつぶやき、いつもより強く指をしゃぶり始めた。

「あかちゃんまん」にドキドキ

ハルちゃんもドキドキしているようだ。こうして3人プラスαの生活が始まった。

と思っていたら、あっという間に臨月になり、いつのまにやら妻のお腹はポンポコリンになっていた。二人目とはそういうものなのだ。きっと。かまってあげられなくてごめん、二人目。

僕のテンションの低さにすねてしまったのか出産予定日になっても二人目は出てこなかった。その翌日もなんの音沙汰もなかったので、僕らは海に出かけることにした。もしかするとハルちゃんの時みたいに、波の満ち引きの力で出てきてくれるかもしれないと思ったからだ。海に到着すると、ハルちゃんは興奮してすぐ砂浜に飛び出した。そのあとを身重の妻がゆっくりと歩いてゆく。そして二人は波打際にたどり着くと、手をつないで一緒に海を眺めはじめた。

海

僕はその光景を見ながら、3人の生活はとっても楽しかったなとしみじみ思い返していた。

ハルちゃんと僕と妻。

ハルちゃんがわが家に来てから、以前より比べものにならないくらいたくさん笑ったなと。そして二人目がやってきたら、今よりずっと楽しいにちがいない。きっと。

出産予定日から6日がすぎたある日「お昼ごはんはなに食べようね」と妻と話していたら、妻が突然その場にしゃがみこんで「きたかも、きたかも」とつぶやいた。妻はすぐスマホのアプリを立ち上げ、陣痛の間隔を計ってみると、すでに間隔が3分を切っていた。すぐさま助産師さんに電話をすると「そのまま出産センターにきてください」ということになり、ハルちゃんを抱えてタクシーに乗りこんだ。

出産センターに入ると、助産師さんから「これから出産にどれくらいかかるか分からないから、娘さんは誰かに預けた方がいい」と言われた。さっそく近所のお友達に電話すると、彼女はすぐハルちゃんを病院まで迎えにきてくれた。これで出産に集中できると、走って出産センターに戻ると、すでに妻の出産は佳境にさしかかっているようだった。

陣痛で汗だくの妻に助産師さんが「さあ、もういきんでもいいわよ。赤ちゃんの頭は見えているからあと少しよ!!」と叫んだ。

「さあ、いきんで!!」

その声を聞きながら、ハルちゃんの時はここから3時間まったく出てこなかったことを思い出した。今回はどれくらいかかるのかと不安に思っていたら、妻が3回目にいきんだ瞬間に、あっけなく赤ちゃんがスルッとでてきた。

安産!!

すごい安産!!

助産師さんは産まれたての赤ちゃんを妻の胸の上にそっと置いた。妻は、赤ちゃんを抱っこしながら「ああ、よかったぁ」とつぶやいた。ほんとうによかった。

すぐに助産師さんが僕に「この子の名前はもう決まってるの?」と聞かれたので「こうたろうです」と答えた。すると妻は赤ちゃんに向かって「こうたろう。こうちゃん。こうたろう」と呼びかけた。僕らの新しい家族は元気な男の子だ。

僕も「よくきた、よくきた、こうたろうくん」と話しかけた。(つづく)

こうたろうくん
小野博

PROFILE

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写真家・文筆家。2002年よりアムステルダム在住。著作に世界を旅した記録を綴ったエッセイ集『Line on the Earth ライン・オン・ジ・アース』(エディマン)、日本とアムステルダムでの暮らしを綴った『世界は小さな祝祭であふれている』(モ・クシュラ)など。

(制作 * エチカ)

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