フードユニット・TORiの岡本雅恵さん。今回はお子さんの名付けについてのお話です。
生まれてくる赤ちゃんに名前をつけること。出産に続く大イベントであり、一人の個として、アイデンティティとして、名前って、人生を伴走する相方のようなもの。
名前を呼んだり呼ばれたりするだけで、相手との距離はぐっと近くなりますものね。もしかしたら、その人の人生を彩る指標となるものかもしれません。
我が家の場合、私の名前に「え」がつくのですが、母も祖母もつくので、最後に「え」がつく名前がいいな〜とぼんやり考えていました。当時、お店を一緒にやっていた友人に、何がいいかな〜なんて相談しながら、私が好きそうな名前の候補を出してもらったりして、あれもいいな〜これもいいな〜なんて楽しく悩む日々でした。
そんな話を夫にしたら、自分の名前は漢字一文字で最後に「ん」がつき、弟も祖父もそうだから、さすがに女の子で「ん」がつく名前はなかなか思い浮かべられないけども、漢字一文字の名前がいい!ということになり、最後に「え」がつき、漢字が一文字である、という条件で探し始めたのでした。
そうなってくると選択肢はぐっと狭まります。お店に行き、友人に話すと、それって、「こずえ」しかないね!!と嬉しそうに言うではありませんか!突然その単語を聞いて、最初は漢字が出てこなかったわけですが、木偏に肖像画の肖で「梢」というやりとりに加え、梢という漢字は、木の幹や枝の先端の部分、という意味があり、さらには鳥がとまる場所、と調べたら載っていたのです。
これにはびっくり!だって私はその時、TORiという屋号で料理の活動をしてお店で働いていたのですから!そんなこんなで友人と大盛り上がり!もうこれしかないよね〜!!なんて、決まったも同然!とばかりに夫に伝えました。夫は、私の勢いありすぎるプレゼンテーションに最初はびっくりしていましたが、満場一致とはまさにこのこと!うん、これしかないね!!と賛成してくれました。
一応、字画も調べましたよ。そういうところはやはり気にしてしまうのですが、よかったのでなおさらこの名前にしようと決めました。
「梢」という枝の先端部分は、日々成長していく場所であり、鳥がとまる安らぎの場所でもあるということ。娘は「こっちゃん」というあだ名で呼ばれ、名前の由来どおり、自由にすくすくと成長しています。
彼女が大きくなってきたので、なんでこの名前にしたのか、意味や由来なんかを聞かれることがあります。こちらとしては鼻息荒く、経緯を詳しく説明しようと思うのですが、その時々で、捉え方は違うようで、彼女なりに、ゆっくり咀嚼しているようです。最近は、小学校の校歌の歌詞に出てくることがわかり、嬉しそうに報告してくれました。そんな風に、喜んだ顔が見られる度に、この名前をつけてよかったな〜って、名付けの一連のドラマを思い出しています。
PROFILE
Rom 岡本雅恵このライターの記事一覧
料理家。友人と共にフードユニットTORiとして、カフェ営業、ケータリング、webや雑誌などのレシピ提供などを経て、2020年に長野へ移住。畑に隣接する古民家をアトリエとし、Romという屋号で活動を開始。野菜を育てたり、土に近い暮らしを通じて、さらに季節と地域を意識した食の在り方を模索中。女の子と男の子の二児の母。
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(制作 * エチカ)