コミックやアートブックの翻訳出版を手がける神戸一絵さんが、サンフランシスコを舞台に繰り広げる初めての妊娠・出産・子育ての物語。今回はマタニティ期と出産後の身体の変化に向き合いながら自分らしく楽しんだファッションについて。アメリカらしいというエピソードも教えてくれました。
こんにちは。抱っこのしすぎで腕だけアスリート級の神戸です。みなさん、マタニティ期〜出産直後の体型変化やファッションの悩みはありますか?私はありました。
服装に関しては、量販店やネットストアに行けばウエスト部分が腹巻のようになっている妊婦向けジーンズやワンピースがありますが、アメリカの主流スタイルは基本的に大人っぽい、セクシー路線。カジュアルで露出の少ない服が好きな私の趣味ではなく、日本にあるような痒いところに手が届くマタニティ服はありませんでした(日本すごい)。
そこで、アメリカでの激務とステーキの美味しさで身体がふた回り大きくなった夫から、彼がもう着られないメンズMサイズのTシャツやコートなどを拝借。ズボンは普段のもののボタン部分に輪ゴムを通して。大きいおなかとバランスを取る(?)ためにお気に入りのピアスをしたりバンダナを頭に巻いたりして顔周りにも重点を置く工夫を。マタニティ専用のアイテムはほとんど買わず、選択肢が少ないなりに手持ちのもので妊婦ファッションを楽しんでいました。
すると、さすが褒め上手なアメリカ人。同僚が“You are the most fashionable mother-to-be I’ve ever seen!”(私が見た中で一番おしゃれな妊婦だわ!)と非常に胎教によい言葉をくれました。

自分が出産するまで知らなかったのですが、出産後にすぐおなかが元通りになるわけじゃないんですね。私の場合、産後は妊娠中期くらいのおなかの大きさから約2ヵ月かけて徐々に妊娠前のサイズに戻っていきました。その後、産後4ヵ月ごろからはごっそり髪が抜け始めたので、夫のお下がり服と帽子やターバンなど妊婦ファッションに使ったアイテムは産後1年近く活躍しました。


そんなこんなで次々にくる産後の悩みと付き合っているころ、近所の公園で立ち話をした女性に産後2ヵ月であることを伝えると、”You look amazing. Good for you!”(産後すぐには見えない、すごいわ。やるわね!)と褒め称えてくれました。ここでも、とにかく褒めるアメリカ人のポジティブ精神が発動。小さな出来事ですが今でも覚えているくらい、妊娠・出産で目まぐるしく変化する心と身体に明るい言葉が沁みました。
そんな服装や見た目にまつわる前向きな言葉がうれしかったので、今度は私が妊婦さんや産後のお母さんに、「イケてますね!素敵!最高!」と声をかけるようにしています。広い世界の片隅で、今日も母たちの気分を上げて情緒の安定に一役買えますように。

PROFILE
神戸一絵このライターの記事一覧
大阪府出身。2019年に渡米し、現地のサブカル系出版社に勤務。2020年にサンフランシスコで第一子(一人っ子予定)を出産。現在は神奈川県鎌倉市在住で、子育てをしながらフリーランスでコミックやアートブックの翻訳出版にたずさわる。鎌倉の丁寧な暮らしとアメリカの合理的な子育てのハイブリッドを目指している。
(制作 * エチカ)