まだまだ新米おかあさん「マタニティ期のお出かけが、家族みんなの思い出に」
ライターの藤沢あかりさんが、マタニティ期に夫婦ふたりで出かけたときのことを振り返ります。
もうすぐ家族が増える。赤ちゃんに会える。楽しみを指折り数えて待つ日々は、夫婦ふたりだけの時間終了までのカウントダウンでもあります。
出産前は、「いまだけ」「もう最後だから」を理由に、夫婦でいろいろなところへお出かけしました。産後はラーメンを食べにくいらしいから。焼肉も行けないらしいよ。コース料理もいまだけだよね、などなど挙げればキリがありません。
ふたりの出産を終え、いまの実感としては、赤ちゃんが生まれたから行けない場所というのは意外とそう多くありません。そもそもラーメン屋にそこまで行くタイプではなかったし、コースで出される高級店に頻繁に行っていたかというと、もちろんそんなこともなく。
もしどうしてもラーメンを食べたいなら夫婦交互で食べればいいし、コース料理をふたりでゆっくり楽しみたいときはシッターさんやサポーターの人に頼むのもアリ。息抜きのために誰かの手を借りることが、どんどん一般的になっているのを感じますから、そう気に病まなくてもいいのでは、というのが本音です。
一方で逆説的ではあるけれど、やはり夫婦ふたりだけのうちに、とっておきの時間を作っておくのも大事な気がしています。
妊娠も後期に入り、いよいよというころ、少し奮発して夫とうなぎを食べに行きました(ちなみに、うなぎはビタミンAが多い食材のため、食べる時期に気をつけた方がいいという見解もあります。ご自身で調べてみてくださいね)。
座敷でゆっくりくつろぎながら、夫と向かい合っておいしいものを、のんびり食べる。いまあらためて振り返ってみても贅沢な時間です。特にうなぎは、焼き上がりを待つ間がとにかく長い。子連れなら注文してさーっと食べ終えて店を出ても、まだお釣りが来るくらいの時間がかかりますから、そもそも選択肢に入りません。
このとき、のんびりとうなぎを待ちながら話したのは、子どもの名前や、お互いの仕事、変わる生活、これからのこと。食べたいものを食べる、行けない場所に行く。その目的も大事ですが「ふたりでゆっくり未来のことを考え、話す」という時間が、なにより貴重で、産後の自分を支えていたのかもしれません。
家では、ふたりで話すといっても、なんとなくついているテレビを見てしまったり、スマホを触りながら、家事をしながらだったりと、どこか真剣味に欠けることも多いものです。でも、こうして環境が変わると、いつもより本音が話せるし、相手の話にもきちんと耳を傾けられるから不思議です。
わたしは出産が7月、8月とふたりとも夏だったので、ちょうど安定期に入っていたゴールデンウィークにも旅行に行きました。ひとり目のときは怖いもの知らずだったこともあり台湾へ。ふたり目のときには、上の子もいるし、なにかあっては大変だからということで国内を選び、そのときは沖縄へ行きました。
どちらも、安定期とはいえおなかも目立ち始めていたころでしたから、精力的に歩き回ることもなく、のんびりとした旅だったように思います。でも、普段の旅行にはないスローテンポさゆえか、景色や空の色、街の人たちの様子など、旅行の空気そのものがとても記憶に残っています。
奮発した食事や旅だけが特別な機会ではありませんが、ちょっと意識して「ふたり」の時間を考えてみると、マタニティ時期のしあわせな思い出がぐんと増えていきます。
そしてぜひ、妊婦姿の写真をたくさん、たくさん残しておいてください。
子どもがおしゃべりできるようになったころ、おなかの大きな写真を見せながら「このなかに、あなたが入っているんだよ」と伝えると、驚きとよろこびがないまぜになった、しあわせなリアクションを見せてくれるのです。そう思うと、ふたりから3人、4人と増えていく家族の時間は、きちんとつながっているんだと感じます。
マタニティ期は体調とにらめっこのところもあるでしょうし、無理は禁物です。それぞれの安心できるスピードで、いまの「ふたり」の時間を楽しめますように。
PROFILE
藤沢あかりこのライターの記事一覧
編集者、ライター。衣食住や子育てなど暮らしまわりを中心に執筆。主流・傍流にこだわらない視点で丁寧に取材し、分かりやすい言葉を使って伝えることがモットー。2012年、2017年、どちらも夏生まれの2児の母。
https://www.instagram.com/akari_kd/
(制作 * エチカ)