先輩パパとママの毎日コラムvol.119

なんとなくおかあさん「半径1kmか、はたまた海外か。」

2017/12/25
なんとなくおかあさん「半径1kmか、はたまた海外か。」 なんとなくおかあさん「半径1kmか、はたまた海外か。」

2人の子どものママでもあるライター・小宮山さくらさんによる等身大の子育てコラム。

生後1ヵ月をすぎると、そろそろ赤ちゃんもお出かけデビュー。「たくさん外気に触れさせて、いろんな経験をさせてあげましょう」などと本には書かれてありますが、かわいいかわいい我が子とのお出かけ、みなさん、どのように楽しんでいますか?

実はわたし、我が子が赤ちゃんのころ、ものすごーく「お出かけ」が苦手でした……。まずは、電車。混雑した車内でのベビーカー、ものすごく気を使います。機嫌が悪くなって泣きやまなくなったらどうしよう。うんちをしてしまって、ニオイが充満したらどうしよう、誰かに迷惑をかけてしまったらどうしよう……。

そして、外食。ここでも、泣いちゃったらどうしよう。あやし続けてご飯どころじゃなくなったらどうしよう。お店の人に「お客さん、困ります」って言われたらどうしよう(実際は、そんなこと言われたことは一度もないのですが)……。そんな心配ばかりが頭をグルグルまわって、考えるだけで気疲れしてしまうんですよね。我が家にはマイカーがないので、レンタカーしないとドライブもできないし……。

とはいえ、仮に自分がよその赤ちゃんと電車やレストランで同じ空間にいたとして、その赤ちゃんが泣きわめこうが、うんちをもらそうが、まったくなんとも思わないどころか、「自分にできることがあればなんでも手伝いますよ!」と言うはずなので、今思うと気にしすぎだったような気もするのですが……、産後はなにかと世間に対して不安になってしまうというか、マイナス思考気味になってしまうことが多かったので、それも原因だったのかもしれません。とにかく「外出中に気疲れしたくない!」という気持ちがとても強かったんですね。

気軽に、積極的に赤ちゃんと一緒に遠出を楽しんでいるお母さんを見かけるたびに、そのパワフルさをかっこよく思い、淡い憧れを抱くこともありました。でも、きっと自分も同じようにしようとすると、「えいやっ」という頑張りが必要になってしまう。そしてその頑張りは、重なると無理となり、じわじわとわたしのストレスになってしまう。わたしの子育てのモットーは「絶対に無理はしない」「赤ちゃんのためにも、自分の気持ちの安定を大切にする」だったので、自分らしく子育てを楽しむためには、やっぱり、お出かけは歩ける範囲でできるだけ楽しもう!という結論に。というわけで、よほど必要な用事がない限り、お出かけは最大でも「最寄り駅」まで。電車に乗ることは滅多にありませんでした。

猫と戯れる

幸いわたしの街には大きな公園もあるし、にぎやかな商店街もあります。赤ちゃんの目がぱっちり開いているときは、近所の安全な道や公園を散歩しながら、外の風に触れさせてあげる。赤ちゃんがベビーカーで寝てしまったら、ベビーカーのまま入れる広めのカフェで一休み。わたしは子どもを産む前からひとりでカフェに入ってぼんやりするのがとても好きだったので、このひとときは極上のリラックスタイムとなりました。そして、赤ちゃんが目覚めてうにゃうにゃ言い出したら、泣き出す前に、そっと店を出る。こんな感じで、とにかく赤ちゃんに合わせて行動することを心がけると、ストレスなくお出かけが楽しめるような気がしました。

春は、近所の桜を見に。夏は、暑い日は無理せず家でごろごろしつつ、涼しくなってくる夕方ごろから近所をお散歩しました。秋は気候がさわやかで、風も心地よくて、散歩がとっても楽しかった。冬はやっぱり風邪が心配なので、しっかり暖かくしてからお出かけ。東京に初めて雪が降った日は、傘をささずにいっしょに雪にあたりに行きました。5分くらいですぐに家に入ったけれど、我が子の不思議そうな顔がすごく印象的で面白かった。今思い返すと、とても良い思い出です。

母子で雪にあたりに

子どもたちが小さいころは、ほとんどの日をこんなふうに過ごしていたので、渋谷まで電車で10分で出られる場所に住んでいるにも関わらず、うちの子どもたちは3才くらいになるまで、ろくに渋谷へ行ったこともありません。それでも、まったく思い残しがないくらい、毎日楽しくお出かけが楽しめていました。また、何かあったらすぐに家に帰れる距離というのは、まだ小さな赤ちゃんを抱く自分にとってすごく安心感のあるものでした。この、意識的に安心感を得ていくということは、初めてだらけの子育て生活のなかで、自分にとってとても大きな心の支えになったように思います。

女性は、産後しばらくは、出産前とは劇的に生活が変わります。朝から晩までとにかく赤ちゃん中心だし、夜に外出なんてもってのほかだし、行動範囲も驚くほど狭まって、毎日あちこちへ出かけていく夫(仕事だということは重々分かっていても)をうらめしく思ってしまうこともしばしば。

でもね、小学生くらいになると、渋谷だって、銀座だって、余裕で一緒にお出かけできます。だから、赤ちゃん時代くらいは、無理をせず、行動範囲を狭めてみてもいいのかなと思うんです。

暖かな太陽、青い空、さわやかな風、揺れる木々、色とりどりの花、散歩中の犬たちや早足で歩く野良猫たち、声をかけてくれる商店街の人々の笑顔……。赤ちゃんのまわりには無限の世界が広がっていて、赤ちゃんが感じる情報も、きっと無限大。ベビーカーの中で気持ちよさそうに声をあげる我が子の顔を見つめて、ああ、そうか、大切なのは距離じゃないんだな、と何度も実感したことがありました。

といいつつ、自分は極端なところもあり、最寄り駅をびゅーんと飛び越して、沖縄やグアムなど、飛行機に乗っていくようなビッグなお出かけ(というか、もう、旅行ですね)は、年に数回行っていました。どうせ無理をするなら、思いきり無理をしよう!という感覚とでも言うのでしょうか。この遠出の旅の話は、また別の機会に……。

さて、我が子がふたりともベビーカーも抱っこひもも卒業してしまったいま。お散歩に出ても、わたしを置いて先へ先へと走っていってしまう4才と7才の後ろ姿をみて、成長がうれしいような、置いていかれてさみしいような、複雑な気分を味わっています。やっぱり、しつこく何度も書いてしまいますが、赤ちゃん時代って本当に特別なもの。今となっては、赤ちゃんとくっつきながら近所をぶらぶらと歩いたあの日々をとても懐かしく思い出します。

後ろ姿

このコラムを書いてる今は、ずっと雨続き。きっと、赤ちゃんとお散歩に行けなくて残念に思ているお母さんも多いんだろうな、なんて思いながら筆を進めています。これを読んでいるあなたは、どうでしょうか。今日も、明日も、気持ちのよい天気だといいな。どうぞ、半径1kmに広がる豊かな世界を、小さな赤ちゃんと一緒に、めいっぱい楽しんでくださいね。

小宮山さくら

PROFILE

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ライター。クリエイターへの取材やインタビューを中心に、『カメラ日和』『tocotoco』(第一プログレス)などの雑誌、書籍、広告などで活動。参加書籍に『無名の頃』(パイインターナショナル)、『脇阪克二のデザイン』(PIEBOOKS)、『エジプト塩の本』(美術出版社)、『猪熊弦一郎のおもちゃ箱』(小学館)など。目下、2児の子育て中。

(制作 * エチカ)

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