先輩パパとママの毎日コラムvol.57

伊野家の子育て日記「子どもの立会い出産」

2017/1/31
伊野家の子育て日記「子どもの立会い出産」 伊野家の子育て日記「子どもの立会い出産」

写真とモノづくり好きなママの、子育て写真日記。

第二子を妊娠したことがわかったとき、出産には娘に立ち会ってもらいたい、とすぐに思った。

子どもの立ち会いが可能な産院を探し、親子3人で初診を受けに行って最初にもらったエコー写真には7mm大の胎嚢が写っていて、数ヵ月前に2才になったばかりの娘は、赤ちゃんの形がどこにもないその写真を、長いこと不思議そうに眺めていた。

約3年ぶりの妊娠。既に子どもがひとりいるので、自分の体調にあわせて外出を控えたり休息をとったりというのがしにくいし、食べものの匂いが辛い時期でも子どもには食事を出さないといけない。そのうえ、1人目のときはほとんどなかったつわりが、2人目のときはバッチリあって、全体的に前回よりもだいぶハードだった。ただ、理屈が通じない2才児と毎日一緒にいる妊婦生活は、苦労も多かったけれど、それだけに太りすぎるヒマがなかったので、体重管理には悩まされずに済んだ。

長女

娘に出産の説明をするのは簡単だった。1才になる前くらいからずっと大好きで何度も繰り返し見ていた、チェコの国民的キャラクター・クルテクのアニメに、2匹のウサギが恋に落ちて結婚し子どもが生まれるという短編があった。そのウサギの出産シーン、日本の子ども向け表現の感覚からするとちょっとドキっとするくらい”ちゃんと”描かれていて、大きなお腹をおさえながら痛そうに何度か呻いたあと、仰向けに寝転がると足の間の穴がおおきく広がって、そこからコロンコロンと赤ちゃんウサギが出てくる。娘はこれを小さい時から見ていたので、あれと同じことが人間にも起こる、と説明するだけで済んだ。

あなたの弟が生まれるときは、母もああいう風になる。すごく痛くて苦しいから、見るのは怖いかもしれないけど(怖くなったらやめてもいいけど)、できればそばにいて見守ってほしい。折に触れて何度か出産に立ち会って欲しいことを伝えていたが、毎回、顔色を変えずにコクリと頷き「いいよ。」と請け合ってくれた。

大きなお腹をのぞく

息子が生まれたのは、出産予定日を5日過ぎてからだった。お昼を食べたあと、近所の公園に遊びに出掛けたら、昼間はほぼオムツなしで問題なく過ごせるようになっていた娘が、おもらしをしてしまい、仕方なく帰宅することに。自宅に戻って着替えをさせて、ひと息ついたところで、突然、陣痛がはじまった。「あ、これは、前駆陣痛じゃない、本陣痛だ。」とすぐにわかるくらい、力強い収縮だった。それから僅か20分で、次の波がきた。えー!と内心慌てつつ、次までの間隔を計ると、今度は30分だった。その次は10分、その次はまた30分。安定していないけれど、10分のときもあるし、もうこれは絶対に本陣痛だという確信があったので、夫と産院に電話をし、向かう準備をした。

夫の帰宅を待っているあいだ、不規則な陣痛をできるだけ何食わぬ顔でやり過ごしながら、娘に、いよいよ弟が生まれそうだ、産院に行くよ、と伝えた。このときも、娘は落ち着いた様子で「わかった。」と言った。

産院

陣痛がすすむ間、わたしがあまりに痛がると娘が怖じ気づいてしまうのではないかと心配で、できるだけ声を出さずに大きく大きく息を吐いて痛みを逃すようにしていたが、当の娘は「ひなこが横にいるから(大丈夫だから)ね。」と励ましの言葉をかける余裕を見せた。破水して分娩台に移動し、しばらくして夫と一緒に入室してきたときは最初だけ少し緊張した顔をしていたが、いざ分娩がはじまると「がんばれー。」と応援し、無事に生まれて(娘を産んだ時と同様、あっという間に出てきた!)胸の上に置かれた息子の血まみれの頭をわたしがぼんやり眺めていると「はは、がんばったね。いいこだったよ、じょうずにできたよ。」と大いに褒めてくれたのだった。

産まれたばかりの赤ちゃんと

そんなこんなで、娘はとても頼もしく、すんなりと、「おねえちゃん」になった。弟の誕生を自然に受け入れて可愛がり、いわゆる「赤ちゃん返り」で手こずらせることもほとんどなかった。まだ3才にもなっていないのに、たいしたものだなあと、当時から感心していたけれど、いま改めてその頃の写真を見返すと、赤ん坊の頭を撫でたり抱きついたりキスしたりしてる娘の姿が、記憶よりもずっとずっと小さく幼くて、胸がいっぱいになる。

きょうだい揃っておやすみ
伊野妙

PROFILE

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東京生まれ、横浜育ち。女の子と男の子の三児の母。家庭業の傍ら、編集・ライティング・翻訳などの仕事を少々、ニットデザイン・制作販売の仕事を少々(Juhla[ユフラ]主宰 /『輪針だからカンタン! おしゃれでかわいい手編みこもの』発売中)。
http://instagram.com/eatoooni

(制作 * エチカ)

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